不可知の可能性より、確実な解決法を ーー 命の選択を

 最近、一般報道では、基礎解析の最新研究成果の発表に対し、先々どうなるかわからない、不可知の新薬開発の可能性議論より、だからどうなる?確実な解決法はどこにある?という議論が提起されている。多大な人員、物流とその土台となる研究費の奔流に対し、もたらされるのは、不可知の未来への期待のみ、では人々の期待にすでに応えられない。

 でも新型コロナウイルス感染でも、その原因、発症に至るには、八百万(やおよろず)の原因があるわけで、原因ウイルス除く体内要因は一つどころか、それころクラスタ−となって、複雑なシグナルネットワークは半導体チップの比ではない。コロナウイルス感染では、ワクチン接種の有無、回数、その後の生活など、関わる因子が多すぎて、患者ごとの単純比較でさえ、困難である。

 というのも、各人における、正常状態とは何か?という根本問題の情報がないからである。正常な状態、いわゆる健康にある個々人の、体内状態とは何か?年齢に応じてこれまで過ごしてきた人生の、時期、現状、遺伝型、これは単に他人と比較して得られるものではない。感染した、を発症した、その時点だけの解析ではその後の回復の予測さえ難しい。

 当研究所では、まず個々人の正常状態とは何か、から疑問を発し、個人の正常状態を解析するには、比較できるのは個々人の歴史しかない、というところから研究を発している。また、その病が何であるにしろ、治ってこそ体内機構の解析ができる、病中から回復状態の時系列解析してこそ、体内因子の何が動いたかを知ることができる、という認識が根底にある。

コロナウイルス感染については、ワクチン接種前の状態から4回目接種以降、あるいはワクチン接種拒否の方がいると、コロナ発症の有無により、もちろん、その後重篤な肺炎を発症した方を含め、経時的にその回復過程、合併症の有無を子細に見当し、分子機構解析を行っている(論文準備中)。

 つまり、病気の予防、治療というのは、長いプロセスの解析が必要であり、一点のみの検体採取とその他人との比較では、不可知の未来にしか、繋げるられないのは自明の理、事実なのである。古来、癌研究は、癌になるために動く因子を追求して、八百万の結果を得てきた。除去技術の進歩は言うに及ばないが、再発・転移のメカニズム、癌ステムセル(幹細胞)対策、治癒に至るまでの長い過程を支えるに一番効果的なのは、運の強さではないかと疑うほど、医科学はまだ課題ばかり、不可知の未来しか届けていないのは事実である。

槐耳療法(事業紹介のページ参照)は、多大な効果を上げているが、最近、難治例での低容量抗癌剤併用療法に失敗し、上記癌ステムセル対策に試行錯誤している。全遺伝子解析(一人に対し、2年以上の経時的解析3−10回程度)の結果をより有効に活かすには、槐耳だけでは足りず、栄養療法、肝臓はじめ臓器機能維持・増進など、毒性と副作用のないものに限り、併用療法を採用している。

それでもなお、課題は多く、特に外科的除去が適応されない例では苦慮する。乳癌の摘出拒否の例はその最たるものである。除去後の筋拘縮の相談の方が、解決策があるという意味では救いがある。患者の悩みは癌が消失してもつきない。

 この文章では、病気になるには多々の要因あり、治る道は、意外と一筋道、その基調に乗せることが要であることを強調する。単一遺伝子、単一物質と周辺の変異では、発症予防にはほど遠い。予防に使える手段はすでに解決法に繋がるものも増え、早期診断、事前予防法など、考慮できる範囲が広がった。まずは、個々人の正常状態維持とは何か、自分はどういう時間を過ごしていきたいか、そして、医院においては治療を受けられるが、病気のなかったころの日常に戻れない、という弊害が目につく。そうなってから相談されても使える手段が限られる。水も飲めなくなったら、槐耳のみならずどの療法も使えない。

 治療は手段であって、目的ではない。どうか、自分は何を望むかをしっかり考え、目的に合わせて正しい選択をすることに躊躇しない自分にまずは立ち戻ることを考えていただきたいと思う。そして、使えるものは猫の手も使う、という気持ちになっていただきたいと切に願う。いろいろ、家族や個人により選択肢はあると考えるが、まずは何を望むか、多大な研究費と人員動員により不可知の未来を嘆き糾弾するのみならず、約束された回復と、自分の大切な時間の価値をよく考察して、正しい選択をしていただきたいと切に願うものである。