アンドロイドは電気羊の夢を見ないことは、フィリップ・K・ディックが既に書いているが、人が機械部品内包や金属部品を多々体内に抱えて機能補助が当たり前となった時代の健康診断、検診とはどこまで可能なのだろうか?
心臓のペースメーカーはもとより、将来的には麻痺した機能の補助のため、神経の電子伝達系補助システム装備、義手義足の進化形となる人工部品の装着、普通でも、骨粗鬆症のための骨折治療に金属分品を用いた固定など、SFが具象化している現代である。この時代の健康診断、メディカルチェックとして、何がどこまでなら可能、あるいは必要なのかと問われる時代が来た。
健康診断を受ける人間の内部が、生まれたままとは限らないのが常識、常に念頭に置かなければならないことを、往々にして医師は忘れる。単に、胆管に挿入された金属シャントのために、MRIを受けられないということさえ、言われないと思い出さなかった。
凡例を示すと、
75歳女性、大量の下血を主訴として、大腸内視鏡検査を受けたところ、回盲部に癌病変を発見。これまでの癌血液検査にて精密検査を要するとの結果なし(知りうる限りで3年間以上)。その他異常所見なし。
ここで、この患者は、3年前に、前腕の2つの骨(橈骨・尺骨)双方の、開放性複雑骨折を起こしており、治療のために複数の金属釘・架橋装置を装着、その後2度の手術により、回復をはかってきた。また、この期間に室内転倒により、大腿骨骨頭・腸骨にひびが入るほどの怪我をし、さらなる金属による固定を余儀なくされた。つまり、金属を体内に装着した状態が長く続いていたわけである。
体内の金属は、不変ではなく、各種酵素・金属反応により劣化・変性を起こすものである。金属とはいえ、一生ものではない。決して同化はしないが、孤立した状態ではないのである。
しかるに、このとき、当社ブラディオン・セプチン4検出による癌細胞の存在の検査(血液検査を行った)。骨折より足かけ3年ほどたっていた。回盲部の癌の発見より半年ほど前である。当然、このとき癌細胞は体内に存在したはずである。
セプチン4が分泌される、大腸癌、腎・膀胱癌、悪性黒色腫などの対象癌が百万個存在すれば、陽性に出るところ、この検査は完全に陰性であった。骨折前の検査でも陰性であった。
ここで、体内環境が異なっていることに、気づいていなかったのである。
セプチン4は、我々の分子間力顕微鏡を用いた研究で、生体内では二量体(2つの分子が並んでいる状態)として存在し、直径は約5−10ナノメーター(10のマイナス9乗)である。検査では、血液中のこの分子に、特異抗体を混合し、結合した抗原・抗体の総量を測定して、結果とする。つまり、血液中にセプチン4分子が存在しなければ、抗体のみの基準点となり、陽性反応が認められない。
上記患者において、何故あってもよいセプチン4が検出されなかったか。
答えは、体内に長期留置されている金属により、抗原抗体反応が阻害される、さらに、セプチン4分子は、体内の金属イオン(たとえば、鉄・マグネシウム・マンガンなど普通に存在するもの)により2量体としての構造を維持できるため、金属イオン濃度が特異的に変化した場合、抗体に結合できる形をとらない。
つまり、金属補強されている身体において、このような計測は意味をなさない。
癌検診に使える手段がはなはだしく阻害されている状態だったのである。
同時に計測した、金属を内包しない普通の方では、陽性も陰性も、反応に障害はない。ただ、お互いに、人工的に機能補正されている条件だとわかっていたのに、当社検査をそのまま施行してしまったことを非常に反省し、回盲部癌が大量下血により発見されるといういささか特異な症状にも面食らった次第である。
患者は、外科的病巣除去後、経過観察しているが、骨折治療と分けて考えることに、今後を危惧するものである。
槐耳臨床研究も第一期を修了し、第二期へと突入していくが、この反省をもとに、各種例外的事例、抗癌剤の補充としての槐耳(カイジ)の作用基点(同時併用の場合、時期がずれての場合)など、第一期の結果にて疑問に感じたところを明らかにしていく所存である。第一期のまとめは、日本語総説もあるが、論文は以下の通り、
Manami Tanaka, Tomoo Tanaka, Fei Teng, Hong Lin, Ning Li, Zhu Luo, Ding Wei, and Zhengxin Lu. Huaier Induces Cancer Recovery by Rescuing Impaired Function of Transcription Control Based on the Individual Genomic Potential. Archives of Clinical and Biomedical Research 4 (2020): 817-855. DOI: 10.26502/acbr.50170143S
Received: 18 November 2020; Accepted: 09 December 2020; Published: 28 December 2020.