このたびのSARS-COV-2、2003年香港で発生したコロナウイルス由来SARSウイルスの第2弾、によるパンデミック感染により、日本全国、いや世界的な防御対策が採られている。その一環として、消毒剤の空中噴霧、手や顔などの直接噴霧などが励行されているが、消毒剤そのものの毒性が無視されがちであることを強調する。
今回のSARSウイルスの第2弾による感染は、初期症状が下痢であるため、トイレ・トイレ水槽、さらに洗面所排水溝などの消毒は励行していた。ここで用いるべき次亜塩素酸ナトリウム(一般商品名としては、カビキラー・キッチンハイターなど)は、強烈な毒性を持ち,揮発性でもあるため、50ml程度を注いでから、30分程度放置、その間に自分が暴露されないように離れる、その後大量の水で流す、ということを注意点として伝えてきた。
しかるに、薄めてあるとはいえ、この次亜塩素酸ナトリウム溶液を直接手に噴霧する、壁や空中に噴霧するということが平気で行われている現場を目にした。決して直接皮膚に暴露してはいけないもの、がである。次亜塩素酸水なるものもあるが、毒性は減じるものの、というより消毒作用がほとんど無くなるにも関わらず、毒性としてはひけをとらない。希釈した上、室温で何日もおけば消毒作用は消失していくが、毒性は減らない。
最近では、欧州、米国においても、川崎病のようなアレルギー反応が小児にも大人にも起こることが報告されるようになり、激烈な消毒によるアレルギー反応が、湿疹、喘息、はては肺炎に至るまで様々な病変を起こしていると考えられる。
今回の、従来型コロナウイルス感染、海外からの持ち込み型SARSウイルスの第2弾による感染、それらは医療対応にて対処できるが、劇毒化学物質暴露によるアレルギーは、対処が困難で、つまり治らない、あるいは、治るまで大変な思いを長く経過していくものがほとんどである。
第二次大戦後といっても、もはや多くの方が記憶にないであろうが、昭和30年初期までGHQがDDTを辺り構わず散布していた時期があった。私の郷里、北海道の炭鉱町では、毎週のように、大規模散布が住宅、学校、市街地で行われていた。今では、映画の麻雀放浪記でも見ないと実際を想像すらできないのであるが、現状の消毒と称するものは、消毒する必要がなかった文明社会への、人間の愚かさの象徴でもある。
エタノールも、ひとによってはアレルギーがあるが、触るとすぐに反応するので、わかりやすい。
消毒するなら手の洗浄(普通の使い慣れた石けん)で十分である。それより、自宅のトイレの清浄さ、洗面所や風呂の排水溝、本来汚染されやすい場所の徹底消毒をお奨めする。今、お近くに次亜塩素酸ナトリウム溶液の噴霧剤があったら、トイレに流して、自宅のみならず外出時の洗浄剤についても、よくよく内容を吟味する癖をつけるように、知識を新たにするべきである。
空中噴霧、壁への噴霧についても、ご不審があれば、カビキラーを風呂場のタイルにでも噴霧してみて、その怖い作用を自覚していただくのがよろしいかと思います。手の指紋が消えますから、ケミカル火傷の恐ろしさ、それが目に見えない気管支や、上咽頭粘膜などに起きたらと想像してみて下さい。
川崎病は、原因も、治療法も、未だ不明点が多い病気で、今、この再現を見ていると、戦後のDDT散布の影響を目の当たりにしている感がある。