脳は怠けることを覚える

これも、米国での情報である。脳は重量ほぼ1.5キログラム、体重比1/30〜1/60しかないにも関わらず、体内の酸素消費量の30%近く、エネルギー補給も20%以用いている優遇器官である。それなのに、脳が目指すところはできるだけ働かずにエネルギー温存、怠けることにたけているそうだ。
以前、「命の選択を」というコラムを書いたが、病気という事態に対し、何を選択することが自分にとって一番良いか、という選択をする主たる器官、脳が怠け者では選択以前の問題である。主治医と良好な関係にあるのはよろしいが、かといって本来の選択は自分が責任を持たねばならず、だから承諾書という書式も存在する。依存しきってしまうことは、互いにとって非常に危険である。
脳を常日頃から怠けないように訓練するのは根性がいる。エネルギーもいる。考える趣味、スポーツなどにいそしむ毎日ならよろしいが、そういかないときもある。
最善の訓練法は、自分スタイルで周囲を満たしていく日々の暮らしに自分なりの注意を行き渡らせることが簡単で容易で効果的である。たとえば、食事料理である。材料を選び、料理法を工夫し、というだけで結構なエネルギーがいる。何日かの食事につき、計画をたて、十分な材料をそろえておくだけでも、日常に組み込んでおかなければ大変な手間暇となる。かといって、出来合のお惣菜、お金にまかせて外食続き、では病のもとになる。
省エネ、省タイム、省コストは望ましいが、その土台作りには、日常を自分スタイルで誂える訓練が必要になる。日本文化はもともとが誂え文化で、その辺で売っているものの寄せ集めでは成り立たない。もともと、気に入るものは売っていない。
これが、創意工夫の根源であり、脳が怠けずにいられる本質、さらに、病にもとりつかれなくて済む養生訓と言えよう。細かな不調にその都度、売薬、化学合成物質を体内に放り込み、積もった毒性にまたさらに薬剤をつぎ込み、どんどん身体を疲弊させていくのだけは避けたいもの。
その点でも、米国での薬剤製造力の低下は歓迎かもしれない。