3.治らないということ・高瀬舟
日本では、もう長いこと、病は病院に行けば全国津々浦々、同等の医療が同額で受けられるという体制構築に邁進してきた。最先端医療は機器の最先端設備と勘違いし、最先端の知識と経験と技量という、医師自体の価値は度外視されてきて久しい。治療するのは医院の名前でも看板でも壁でもない。医療もひとの為せる業なのである。
思い出してみよう。受診する本来の目的は何か。医院に行きたいと、行かなければと思う動機はなにか。それに対して、今やっている、受けているものは、正しい方向にあるか。当面の窓口となる主治医との相性は良いか。聞きたいことに答えてくれるか。
医師もいろいろなのだ、人間なのだ、ということ、治療方法にも選択肢があり、自分はどれに値するか、その根拠は、という、自分も人間なのだ、という人間関係の基本的な道が見えてこないと、治療にならない。
当方には、随分当初の目的地からかけ離れたところに向かっているなという患者様が多く相談にやってくる。離れすぎるともう戻れない。
治る身体に戻せないほど遠くへ、不安にさいなまれながら長き道のりをあえいで来た方も多い。途上、全く身動きならぬ体内装置になるために、常人では我慢できないほどの苦しみと忍耐を強いられてきて、それでも足りずにもっと進めば地球は丸い、基に戻れると言えるひとはどんな人種か。いや、これは押しつけられたものではなく、半ば自分で自分を洗脳していた結果でもある。