今年の夏は暑かった。熱中症はもちろん、運動不足・過剰から来る体内イオンバランスの失調、特に低カリウム血症は、夜中のこむらがえりなど、種々の不具合の原因となった。ここで、こむらがえりに一服飲むだけで効くという薬がある。漢方、西洋薬、双方存在するが、そのココロは最終的に筋弛緩剤である。危険量ではないので安心と多用すると、予期せぬ重大な結果を生むことがわかったので記しておく。
筋弛緩作用は、広範なホルモン調節の失調を伴い、医学的には偽アルドステロン症という病的事態を惹起する。高血圧、めまい、不快な胃粘膜障害、不整脈(期外収縮)、腎障害(腎結石なども含む)、これらを通じてますます低カリウム血症が進み、はては心不全へと至ることもあるという。
問題は、高血圧になったから降圧剤を併用する、胃の不具合に胃薬、潰瘍薬を追加する、不整脈などになると、抗凝固剤を併用することになり、一山くらい薬を飲む。原因のイオンバランスはますますおかしくなるので、またこむらがえり用の薬を頻用して、最後に心臓まで悪くする悪循環が増幅していく。
要は、不具合に一服盛ればそれで済むなどという安易な発想をしないことである。特に、筋弛緩剤などという、さじ加減によっては相当危険な作用をもたらすものに対し、警戒心を忘れてはいけない。
これは、自分の経験に基づく、心の弱さがもたらす被害についての報告である。こむらがえり用の薬は、服用を中止して2日で他の症状が一切消えた。薬剤性の障害は、やめればすぐ解消するという利点がある。現在、てんこもりの薬を毎日服用している諸氏は、何のために何を、という検証も含め、この薬剤悪循環にはまっていないかどうか、点検してみることをおすすめする。そして、抗生物質などの外的退散のための薬はともかく、一服飲んで何とかなるということに含まれる危険に思いをはせていただきたい。