中国よりカイジによる肝癌の補完療法著効を示すという論文が出ます。著者の許可をいただいて、表紙を示すと共に、抄録を日本語に翻訳したものを呈示させていただきます。
なお、論文はこれからBritish Medical JornalグループのGut(腸)という雑誌に掲載されます。
論文タイトル:Effect of Huaier granule on recurrence after curative resection of HCC: a multicentre, randomised dinical trial.(肝癌治癒切除後の再発に対する槐耳(カイジ)顆粒の効果:多施設無作為抽出比較試験)
抄録:
目的
肝細胞癌(HCC)の根治的外科的切除後の補完療法が無再発生存期間(RFS)または全生存期間(OS)を改善するという証拠はほとんどない。我々は、この未解決の必要性に対処するために、Trametes robinophila Murr(槐耳(カイジ)顆粒)の水性抽出物の利益を評価する、複数の、無作為化された、制御された第IV相試験を実施した。
デザインと結果
合計1,044例の患者を2:1の比率で無作為化し、さらなる最大96週間の治療を受けた槐耳または槐耳無し(対照群)に分けた。一次終了点は無再発生存期間(RFS)とした。二次終了点には、全生存期間(OS)および腫瘍の肝外再発率(ERR)が含まれた。
槐耳投与群(n = 686)および対照(槐耳非投与)群(n = 316)の無再発生存平均期間(RFS)は75.5週間および68.5週間であった(HR: 0.67; 95%CI: 0.55~0.81)。 槐耳投与群と対照(槐耳非投与)群の無再発生存期間(RFS)率の差は、62.39%と49.05%(95%CI: 6.74~19.94; p = 0.0001)であった。これは、それぞれ95.19%および91.46%の槐耳投与群と対照(槐耳非投与)群の全生存期間(OS)につながった(95%CI: 0.26~7.21; p = 0.0207)。 槐耳投与群と槐耳非投与(対照)群との間の腫瘍肝外再発率(ERR)は8.60%tと13.61%(95%CI: -12.59~-2.50; p = 0.0018)であった。
結論
これは、治癒的肝切除後のHCCの補助療法としての槐耳顆粒の有効性を証明するために、39のセンターと1,044人の患者を対象とした最初の全国的な多施設共同研究である。それは、槐耳使用群において無再発生存平均期間(RFS)の有意な延長と肝外発生の減少を示した。
解説
一般の方々にも分かるよう、若干解説させていただきます。まずは例数ですが、これはさすが中国が全国的多施設共同研究(35施設)と銘打っただけあり、肝癌の患者さんを千名以上集め、それを1年強経過観察し、データを取るということは非常に大変な仕事と推察できます。それで結果は非常に統計学的によい値を示しているので、驚きです。以前も弊社のブログで申したことがありますが、医学統計ではp<0.05、つまりp値が0.05すなわち5%より小さい値を示すと、「有意差あり」と表現します。このp<0.05というのは、たとえばA群とB群を比較したときに「A群とB群が異なる(違うグループに属するという前提」があるとすると、5%未満の確率(危険率)で異なるということです。逆に言うと、95%以上の確率でその前提が正しいということです。その点で見ると、上のp値は0.0001や0.0207、0.0018と非常に小さく、それぞれの槐耳投与群と槐耳非投与群の間で異なる、違いがあるが非常にわずかな危険率ですので、ほとんど違うのが正しい、間違いがないということになり、槐耳の効果が認められたと言っていいと言うことになります。
感想
中国でも欧米のような大規模研究が推進され、その研究成果が報告されるようになったことは喜ばしいことです。日本はみるみるうちに、国際論文への投稿数が6位に後退いたしました。実は論文数は中国が1位なのです。論文総数が減少しているのは日本だけだそうです。科学技術立国日本はもう望めないのでしょうね。昨年は中国に4回出かけ、北京、上海、広州、瀋陽、大連と弊社取締役の田中真奈実博士が招待講演をいたしましたが、その時の各市内の人、車、町の様子など非常にエネルギッシュで驚嘆しました。35年前に北京、ハルピン、長春に訪れたことがありましたが、さすがに隔世の感でした。
弊社ではただ今募集していますがん患者ボランティア様の血液を用いた槐耳効果を、中国は深圳のBGI(世界No. 1の遺伝子解析企業)に委託し、分子基盤となるRNAの変化で解析いたします。この結果が槐耳の癌への治療効果がどんな遺伝子が動いてそうなるのか、研究者として非常に興味がありますし、その結果が癌患者様への良い意味で反映できることを期待しています。どうか関心のあります方は弊社の問い合わせ欄に行き、ご連絡してください。お待ちしております。