延命あれこれ

こと癌に限らず、といっても癌という病気が最たるもので、ある日突然やってきて命数を限る事態となる。生きることではなく、死ぬことが人生の毎時毎分を支配して決して脳裏から離れなくなる。達観できるようになるとしても、達観のために貴重な時間を使うわけで、それも本来自分のやりたかったこととは違う。

医療機関で癌と診断され、進行度に応じて治療法に即突入していくのが普通である。内容を理解したのかどうかわからぬうちに、承諾書各種にサインすることになり、立ち止まって考える暇はほとんどない。癌は除去してしまうのが最善であるが、取り切れないもの、発生した経緯を考えるとまた同じ場所、あるいは他の場所から再燃してくる可能性が高いものがあり、人生をその後長く支配していくことになる。

現状、私どもが知る限り、転移の可能性は否定しきれないが、外科的手術で除去できるものが最もありがたい。これが、早期診断のすすめに通じるのであるが、自覚症状やはっきり見た目に変化が出るようになってしまっては早期ではなく、既に転移している場合が多いからやっかいである。

がん治療は、

  1. 外科的除去(内視鏡下、腹腔鏡下、開腹など、これも多種の方式あり)
  2. 補助療法:放射線治療、化学療法、免疫療法、ホルモン療法等
  3. 対症療法:末期の痛み除去に尽きる

が基本であろうが、1の外科手術のために、多くの検査に耐え、体力を枯渇し、その後の補助療法で体力どころか生命をぎりぎりまで削ることになる。体力がないと、治療も受けられない。

今回のタイトルの延命、という状況は、末期に至る、もはや打つ手がないという状況から出てくる単語であるが、末期にもう打つ手がないとき、どうするかは主治医の意向が先行して、患者本人の希望が反映されないことが多い。というより、もう何を希望していいのか考える余裕も体力も意志力もなくなった時点で選択させられるというのが現実ではないだろうか。

最後になって、延命ということになった場合のこれまでの経験を総合すると、

1. 何もしない場合、2年〜3年。このメリットは、体力が続く限り、好きなように毎日を過ごせるということ。胃癌末期(スキルス)で何もしなかった例で3年、抗癌剤治療で1年であった。

2. 宗教的メンタル・コントロール。ご祈祷や、拝み屋さんを頼むケースも多く、上記達観ということで救いを与えてくれる。独りじゃないという心の持ち方も重要である。ただし、いかに生きたいかではなく、いかに死ぬかということが主題のむきもあり、救いにならず、鬱になることもある。

これのみでの延命効果の実数は明らかではないが、膵癌術後転移ありの症例で、抗がん剤とメンタル・コントロールで5年という例がある。

3. 積極的抗がん剤・放射線療法等による一般的治療。これは、延命ということを考える時、逆に残り日数を減らす傾向にある。半年から1年、1年半というところか。大腸がんの末期抗癌剤治療は、12〜18ヶ月と統計にある。

問題は、激烈な副作用と経済的圧迫で、抗がん剤費用のみならず、副作用で身体が効かないから何も出来ず、周囲も大変な苦しみを味わう。

医療機関で出来ること、と自分がしてほしいこと、を良く考えなければならず、他力本願を許さない点が過酷である。頼ってお願いしますと行っても、何をお願いされているのか、完治を望めないとした段階では医師も明言できない。治らなくても言われたとおりにします、という患者は医師にとってありがたくても、宗教ではないので救いにもならない。

4. カイジと栄養補給用サプリのみ、現在2年半〜3年で延命中。全身多臓器転移で手術不能例だが、何もできることはないと言われたから他には何もしない。

5. カイジと放射線療法2回の合計2ヶ月の再発例は、2年であった。カイジ服用中に放射線療法1回1ヶ月、1年カイジ服用後半年でまた放射線療法1ヶ月、その後の転帰は早かった。

最も回復が早く、その後の日常生活に影響が少ないのは、カイジ20g4週間服用後外科的摘除、その後カイジ20gで1年カイジの量を漸減して2年間最後の3ヶ月はカイジ1日3g、という例である。もちろん、厳重な感染症管理を行い、体力温存、無理せず、睡眠時間確保が原則である。

同時期に、大腸がんで同じ進行度合いの患者がいて、患者の希望でカイジ服用せず、抗癌剤服用のみ、という方は、1年半で亡くなった。統計上、ステージ3に分類される大腸がんの抗癌剤治療の平均値であった。

抗がん剤を服用せず、カイジのみの方は、術後1ヶ月で体重が3キロ、3ヶ月で10キロ増え、体力十分で診断前の体調と生活に完全に復調して現在に至る。

乳癌の場合の対比は明瞭で、術前カイジ20g4週間術後1年カイジ治療の例は、手術時に転移ありとされた癌病巣そのものが消失し、術後ホルモン療法を少し追加したものの、予定された抗がん剤投与は中止、体調回復も順調で2年経過。術前より抗がん剤投与で激しい副作用に苦しんだ例では、術後も経過悪く、悪いから抗がん剤を継続・追加投与、放射線療法も追加されていって、現在消息がない。経済的にかなり圧迫され、宗教に頼りにも行けず、その孤独感は深かった。

同じ病気でも、同じく高額の治療をしても、症例により転帰は全く異なる。時間ももちろんだが、どのように過ごすか、過ごせるか、が全く違う。かけたお金の多寡だけの問題ではない。

これまでの例では、手術可能例かどうか、にも左右されるが、何もしない場合の延命時間の方が長いのが皮肉である。ただ、何もしなければ先に来るものはわかっているので、何かできることを探すのが普通である。そのとき、抗がん剤という選択はかなり順位が下がる、少なくともメンタル・コントロールや、免疫賦活(栄養補給ということでもある)の方が有意義に使える時間が長い場合を多く観る。使わなくて済むなら、使う対象にならない方が、癌になっても自分の人生、という意見を多く聞く。

セカンド・オピニオンが日本でも定着してきたので、急いで承諾書にサインするより、一緒に良く考えてくれる医師とともに、どう人生をコントロールするか、癌に支配されるのではなく、病気だけれど自分の人生、という視点を忘れないでいたい。