いままで、弊社のブログにて「検査の基準値・正常値・異常値」「続・検査の基準値・正常値・異常値」そして「健診の基準は施設により異なる」と、健診などの血液検査の基準値についてお話してきました。昨今の健診ではすべて正常値と判断される人がほとんどいないというところまで来て、日本人は総病人かと勘違いされるほど検査結果が一人歩きしている感があります。そこで血液検査について、弊社として一つの提案をしたいと思います。健診の検査結果の表示として、
A. 異常なし
B. 軽度異常
C. 要経過観察・生活改善
D. 要医療・D1: 要治療、D2. 要精密検査
があります。A.は当然、安心していいでしょうが、B. の軽度異常でも心配される方も多いと思います。施設によっては、患者さん用の基準値と健診受診者への基準値を変えているところもあるかと思います。それは、健診や人間ドックというものの目的は、普段は健康そうにしている人で、検査によって早めに異常を見いだして、対応しようというものであるからです。ですが、Bの軽度異常と説明されて、心配性の方は病院に行って精密検査を受けたいと思われる方もいらっしゃるかと思います。
ということで、コンスタントに毎年、健診や人間ドックを受診していて、その結果を保管したり、同じ施設で検査を受けていることにより、経時的に検査結果を施設でも把握されている方はこのブログは必要ないかと思います。そうでなくて、初めて健診や人間ドックを受診して、B以上の評価をされ、健診施設で十分なる説明をされず、ただ結果のみを送付されてきた方にどうしたらいいいかの一つの目安をお伝えしたいと思います。さきほどの健診や人間ドックでの基準値は基本的には厳しく作られています。そこで、このブログではあえてその基準をより柔軟に考えて、少しくらい検査値が基準値をはずれていても心配することないんですよという話をしたいと思います。
そこで、その基準値はどのように決められているかの話をすると、皆さんも納得されることかと思います。2014年4月に日本人間ドック学会が新しい基準値を発表したことはこのブログを読まれている方なら知っていることと思います。まずは、その基準値を決めるために、どのような人のデータを採用されたかお話します。
このデータの大元は、新聞記事などで150万人のデータを解析したというセンセーショナルな記事のせいで、そんな大多数の人間から得られたデータなら正確無比だろうと思われたはずです。そこで、詳しい話をしますと、実はその中から選ばれた1万〜1万5千人のデータを分析したものなのです。それでも十分大きい数字であることは間違いありませんね。で、その1万〜1万5千人という人はどんな人なんでしょうか。ひとことでいうと、スーパーノーマル人という言葉を使ったりしています。その条件は、まず以下の人です。
- 既往歴で悪性腫瘍、慢性肝疾患、慢性腎疾患などないこと
- 退院後1ヶ月以内でない人
- 現在、いわゆる生活習慣病の高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿血症の薬を飲んでいない人
- B型またはC型肝炎でない方
- BMI(肥満度指数)値が25未満、喫煙していない、飲酒1合未満/日、血圧130/85未満の人
- 30〜64歳
これによって、人間ドック受診者訳150万人から34万人が選び出されました。
その中から無作為に1/7の人を選び、その中から検査結果で飛び抜けた値を示した人を除いたスーパーノーマル(超健康人)を1万〜1万5千人を選んで解析したものです。ただし、BMIと血圧の基準値の決定は上の5で前もって選別されている人で行うと矛盾するので、この2つの基準値だけ、それを除いた健康人で得られています。ということで、いかに基準値を得るために、健康人を選んでいるか分かっていただけることと思います。そのような選別で選ばれた人の検査結果ですので、最初から検査結果がばらついていないことが想像できます。その中で、以前のブログで申しました全ての値の下2.5%と上2.5%を除いた95%の人の示す値の下限から上限を基準値としているわけです。ですので、基準値という言葉を使い、正常値とは言い難いわけです。
ということで話が長くなりましたが、このブログではそのようなスーパーノーマル人の95%の範囲というような、あえて狭い基準値を使わず、スーパーノーマル人がほとんどすべてその範疇に入る99.9%を基準にしようというものです。その結果が以下の通りです。参考までに、以前の日本人間ドック学会の基準値を横に並べさせていただきます。
図の説明 検査項目の右隣の列は、その検査項目が正規分布か対数正規分布かを記載しております。それにより、2014年4月日本人間ドック学会が発表した基準値を弊社で統計解析し、求めたものです。それにより、スーパーノーマル人のほぼ100%、すなわち99.9%がこの値に入ることになります。どうでしょうか、巷にあふれている厳しい基準で一喜一憂しなて済むのではないでしょうか。それと、この値でも特別に選ばれた健康人の分布から得た値ですので、厳しい基準とも言えるかもしれません。それと一つ面白いことは、昔はコンピュータの能力が劣っていたので、男女別くらいまでは解析できたことが、現在の技術ではさらに年齢別でも基準値を求めることができるようになったということです。
最後に、前にも申しましたが、比較的コンスタントに健診や人間ドックを受けている方には、この表よりも、むしろ経時的な変化を気にして下さい。昨年や一昨年の検査よりも極端に変化(決してわずかな変化でなく)があったら、もしかかりつけの医療機関がありましたら、主治医に質問され、必要ならその医師から精密検査の依頼や高次医療機関を紹介してもらい、その異常値の元を調べるとよろしいでしょう。