アレルギーの話をいたします。アレルギーは、免疫過剰反応、が正しい和訳と思いますが、ここでは、拒絶反応という意味で使います。家系的に、多種の食材に拒絶反応を起こす方は多く、食材も多岐に渡り、一般的な解説は非常に難しいです。
私どもの医療相談には、いわゆる推理する医学、原因不明の悩み相談が多々あり、今回は、原因不明の湿疹症状について、アレルギー発生機序とともにお話しします。
大変健康な女性で、特にストレスもなく、毎日元気に過ごされてきたミドルエイジの方で、非常に慎み深く、ついででいいのだが・・・という調子で、全身性の湿疹につき相談を受けました。
拝見すると、まるでブユの大群に襲われたような、10円玉大の盛り上がった湿疹(丘疹)が身体の各所にどっさりあり、部分的に集積しているものの、場所の集積もなく、締め付けられる部分とか、外部接触には関わりありません。もちろん、虫刺されでもありません。盛り上がった部分は、多少でこぼこしていますが、虫刺されのような吸口部分はありません。アルコール綿で払拭してみても、変化なく、外部からの刺激は否定的です。痒みはあまり自覚せず。湿疹周囲の発赤が多少強いというのが特徴です。
毎日のように、場所を移動しながら、出ては2時間くらいで引っ込む、を繰り返し、しかし治ることなく、継続して1ヶ月。病院で血液検査、全身検査しても何ら異常は認められない。炎症反応も、肝機能障害もなく、食欲、睡眠その他日常に気がつく変化なし。特に湿疹が出現する前後、最近1ヶ月で外食や慣れぬ料理も口にしておらず、かつ、酒は嗜まない。香辛料、調味料も、特別なものを使っていない。近医も、原因不明というばかり。
さて、「カイジ」は肝機能障害、ストレスによる過剰反応としての湿疹、薬剤性湿疹、老人性湿疹に顕著な改善をもたらすことは多くの方で実証済ですので、解決法はあるとして、この原因をどう見るか。原因解明と、症状のソリューションを同時並行させる、という考え方が漢方なのかもしれません。
ここで、ヒントはこの方は家系的にアレルギー体質である、ということのみ(原因は家族の個々人により異なる)。
全身性の皮膚病変が出るときに、肝機能の変動を疑うのは常道ですが、この方はこれまでも今も異常無しとのことで、さて何を疑うべきか。
ここで、うかがってみたのが、この半年から1年前に遡って、どこかに旅行しなかったか?ということです。しかるに、答えは済州島でした。そこで、閃いたのが、韓国料理、特にキムチに用いられる魚醤です。
魚醤(ぎょしょう)は、それ自体何の問題もなく、日本でも歴史的に醤油など香辛料、調味料として使われてきた、生鮮魚介抽出物質です。今回は、魚醤アレルギーの発症とその後の後遺症を中心に、突然起こるアレルギー、身体の拒否反応について話をいたします。
アレルギーになる原因は、食材ではなく、受け取る側の、人間の準備状態、極度の疲労、体調不良が先に重要です。この方も、そして同じアレルギーの私も、現地韓国の魚醤を属する前、極度に疲労していました。
私の場合の最初の症状、アレルギー反応発端は、済州島におけるキムチ、それも多種類の野菜をそれぞれ漬け込んだキムチを何皿も箸をつけた結果ですが、突然、激烈な腹痛、大量の冷や汗、頻脈に引き続く徐脈と不整脈(期外収縮)が起こり、レストランで身動きならない羽目に陥りました。ビールを飲んでいたのですが、皮膚がまだらに、まるで世界地図のような発赤が全身に起こり、周囲で見ているひとがいたら、さぞやゾンビ映画だったことでしょう。
一昔前の韓国映画でシュリ、という秀作があり、済州島にロケ地となった、シーラホテル(新羅ホテル)の崖っぷちにある、シュリのベンチ、で有名な遠く玄界灘を見晴らす絶景の庭があります。
釜山大学で講義後、休日のつもりで、済州島で1日のんびりしました。シュリのベンチ観光が主な目的ですが、観光客、特に新婚さんで混んでいて風情はありませんでした。韓国文化で最も困るのは、儒教(と、キリスト教)の国では、貪欲、とくに食べることに貪欲であることは徳が低いとされ、日本のような種種雑多文化の混合を自分の料理として昇華するという、食を楽しむ部分が欠落していることです。
済州島は、いわゆる田舎ですから、ホテル料理といっても、コース設定料理しかなく、選択肢がありません。新鮮な魚、魚介類が有名な済州島ですので、キムチの素も、多種多様の魚介類抽出物を用いています。
抽出には、水と酒、それに少々の油成分が不可欠ですが、抽出されたものは、一般的に魚醤と呼ばれます。日本の醤油などの調味料も、かつて多く新鮮な魚醤が用いられて来ましたが、画一化した大量生産性の波に押し流され、今では家庭で普通に用いられる食材ではなく、文学的には、高橋治さんの加賀紀行にてわざわざ魚醤を求めに行く旅が特別に触れられているほどです。
私の症状について解説いたしますと、地図上まだらの皮膚色変化は、非常に短時間に腸管吸収された物質が、あっという間に血管透過性の変化をもたらし、血管から流出した特に酒・酒抽出物により、発赤という結果をもたらしたと言えます。血管性、というより、血中への放出により、自律神経の失調も引き起こし、心拍や体温調節が不可能になる、という連鎖的症状が引き続き起こされました。身体が、そこに持ち込まれたものを全部吐き出そうという、拒絶反応の典型です。
しかし、もともとアレルギー体質でもなく、魚醤(日本製)は大好きで、食材的に問題があったとは思われません。極度の疲労が蓄積されていた、ということのみ、自覚しております。
対処としては、自律神経の伝達能遮断剤で一過性に症状を鎮静、食べたものを吐いて、安静にするしか出来ませんでした。徐脈に血圧降下ですから、神経伝達遮断剤は危険といえば危険ですが、症状をおさえる、いわゆる対症療法に必死でありました。
困ったことに、このアレルギー反応は、身体にしっかり記憶されてしまい、その後、博多の焼肉料理店のキムチ、沖縄の冷麺、東京の中華料理店のエビ油(詳細不明)等で同様の発作を何度か繰り返しました。キムチも、店によっては大丈夫ですし、冷麺も、エビ油料理も、場所と店により症状が出たり出なかったりです。
結局、魚醤と使用する料理全部を人生からマイナスすることになり、非常にがっかりしています。
拒絶反応は、身体の疲弊によるものでありながら、反応を起こしたもとの物質全部にその後の人生、さよならすることになるわけです。
さて、患者様の話に戻りますが、この方の原因は、キムチではないにしろ、魚醤等による感作を経て、少量でも何か魚醤、あるいは抽出油、などの成分を吸収した反応が継続的に出ている。もとを絶たなければならないとして、何を見直すか。慢性的に血管透過性亢進による滲出変化が皮膚に出ているわけで、ありがたいことに、原因不明として特に何も処方されていないため、薬剤性の変化(副作用)はありません。とにかく、湿疹のみについては、カイジが著効し、副作用も毒性もないので、身体の解毒とともに血流で微量のアレルギー反応物質を体外排出するしかない。
人体は海でないので、単純に洗い流すことは出来ません。汗、尿、便などの極めて限られた排出法があるばかりです。カイジの新陳代謝促進で、体内解毒とともに、今体内に存在する微量アレルゲンは破壊し排除できるとしても、これからの方が同時に重要です。
こうも断続的に症状がでるということは、毎日使うものに危険物の混入が考えられ、見直しとしては、水の質、料理に使う油の保存状況、酒(みりん)。また、外食、調理された料理を利用するにしても、エスニック系、調味料系の内容を吟味しないと、いつ再発するかわかりません。
このような、不特定多数の原因物質候補に対し、防衛するには、症状の発端の真の原因、過労による体調不良への対策が必要になります。つまりは、体質改善ということであり、その意味でも1日3g程度の少量の「カイジ」の継続服用は大変有効です。日々のストレス、急に起こる大量の仕事や疲れを避けて生きることは不可能と言っていいでしょう。少々のことには負けない体制を整えるために、この患者様は、今の不調から改善を促進するところから開始しなければならないため、多少の助力を「カイジ」に頼るのは正解と考えます。
ここで、大変な副作用?が1つ。患者様のご尊父様が、自分もアレルギー体質とのことで、「カイジ」をお持ちだったため、娘のために一刻もはやくと手持ちのカイジをご送付くださるとのことでした。親の愛情の深さ、自分を度外視しても娘のために、という気持ちの素晴らしさ・・・・しかし、いかんせん、この備蓄は購入時から1年半たっており、賞味期限が切れている!しかも、保管方法を鑑みるに、日本の高温多湿の環境の中、室温保存されていたと想定され、つまり、身体が拒絶反応のために苦しむ、その原因が合わないものの経口摂取であると判定されているときに、賞味期限切れの、古い薬で内容証明ができないものを摂取していいのか?
今、私は、親の貴い愛情と、医師としての治療するという目的に挟まれて、大いに悩んでいるのであります。親の愛情を否定しろとはとても言えません。どなたか、良い知恵はないでしょうか。ぜひ教えて下さい。