癌は予防できるーその2

癌は予防できるようになりました。正しくは、予防できる癌が増えました。進行癌となって発見されても、外科治療の技術的進捗と、内科的治療法、抗癌剤・免疫療法の選択肢が増えたため、明るい展望が拓けるようになりました。ここで、早期発見というのは、早期の癌を検知するという意味であり、癌を発症していることに変わりないことを明記します。つまり、予防できなかったという点は進行癌と同義であり、症状が出て医院受診してから治療が開始されるという医療の欠点でもあります。

日本では、未だがん治療の方法選択は医師の決定権が大きく、ということは、どの医師、医療機関に受診したかという偶然にその後の人生を左右されるということに他なりません。日常の他の部分では、そう安易に他人まかせにしない生活をしていても、こと医療に関わる限り、かかった医師の方針に従うのみ、聞きたくても質問もしない、できない、という方がほとんどであることに驚かされます。

特に癌治療は高額で、かつ、患者の多くは具合が悪く精神状態も不安定ですので、極めて多くの疑問、要求水準も高く、医師もうかうかとしていられない、多くの勉強と先進技術の取得に追われるものです。逆に医療費負担ができないひとは、もともと要求水準があることさえ知らず、治療法に選択の余地がないので質問しません。

日本人は、知的水準が高く、費用負担の大きさを熟知しているにもかかわらず、医師に唯々諾々と従ってくれる不思議な国民性といえます。これは、古来から、病は忌むものとして、隔離はしても正面から見据えないという精神性の影響かもしれません。古墳時代からは、仏教と儒教の伝来様式により、病に性も含まれるようになりました。

インフォームドコンセント、という概念が徹底されるようになった昨今でも、これは医療機関側、医療費負担者側の危機管理としての様式がほとんどであり、患者の要求水準を再認識するためのもの、という原則はどこへやら、説明内容もマニュアル化されていて、ひどい場合は説明している方が内容を理解していない場面もあり、その後患者と質疑応答がある、ということはマニュアルに記載してある項目以外、想定していません。癌という病気を知るひとにとっては、本来の意味があってなきが如しの状況が毎日あちこちで繰り広げられています。

  1. 本来のがん治療:免疫賦活——自力回復

長い説明は、退屈なだけですので、結論から先に申しますと、発症してしまった癌を治す最も大きな力は体内免疫力です。増えてしまった癌組織をできるだけ除去し、その後抗癌剤に補助療法として痛み対策、栄養補給などを組み合わせるというのが医療現場での処方ですが、基本は、体内におけるがん細胞除去力の活性化、つまりは免疫賦活に尽きるのであります。

このことは、19世紀末には記載されており、癌という病気、あるいは病態を左右し、生命に関わる作用をもたらすものは免疫力である、ということは極めて古い概念であります。今は、あまりにも常識化しておりますが、何故癌を発症するに至るか、という開始点が解明されていない以上、何故免疫力なのか、についてもその本質は明らかではありません。

体内の細胞は7年ほどで全部入れ替わる(脳神経除く)と言われていますが、毎日入れ替わる細胞群に異常なもの、いわゆる出来損ないがあるのは当たり前です。その排除機構の最も大きいものが免疫機構であり、その作用を逃れたとしても、異常細胞がそれこそ異常に繁栄し、増殖するのは奇跡に近い確率です。

それでも、監視の目を逃れ、増殖するに至るには、他の助けが必要不可欠であり、最も大きな要因は、いぼなどに良く診られるウイルス感染や、インフルエンザの猛威、等など感染症一般です。人間の天敵は食物連鎖の上位にある猛獣ではなく、サイズとしては極小の、感染症の要因、細菌・ウイルス等であり、かつて人口を激減させてきたものは天然痘、ペスト、インフルエンザ、結核等の感染症なのであります。

長寿はこの感染症コントロールが奏功した結果でもあり、癌についても、体調が良く、栄養状態も良く、食と睡眠が十分確保され、精神的にも安定していれば、発症の可能性は極めて低い。発症要因は、外敵に対して防御力が弱まることです。その原因が、偶然の感染症、風邪の重症化としても、その重症化の原因は、単なるウイルスの力だけではないことは容易に想像できると思います。

気持ちが落ち込むと免疫力も非常に落ちます。これが、もともと死ぬべき運命だった異常細胞が生き残る最も大きな原因です。どの臓器に取り憑くかについては、家系的嗜好もあり、この点については、分子遺伝学的見地も含め、後に歴史的背景を記述します。

気持ちの落ち込みは、もちろん生活の中に心配、不安など持続的に悩みが存在することが原因ですが、前後して身体の不具合、消化不良、むくみ、便秘や下痢などの消化管症状なども同時進行で存在していることが多く、後から気がつくことが多いです。日本人は、河川・水源に一致、依存した集落発達の歴史があり、そのため、ピロリ菌感染の蔓延となり、胃疝痛、胸焼けなど上部消化管症状が初期症状となることが多いです。

また、免疫力の最前線はイムノグロブリンというタンパク質であるため、低下のサインは、まずは血中タンパク質の低下として検知されることが多いです。タンパク質の産生、製造は、もとの部品がなければできませんから、もとは良いタンパク質の摂取、吸収が必須条件です。ですから、上記の胃の不具合、ピロリ菌による胃壁細胞のペプシノゲン分泌の異常も密接に関与しています。これも、感染症が諸病のもと、諸悪の根源であるという証明でもあります。

最近は、サプリメント流行りで、疲労回復の意味だけでも、良いサプリメント(弊社事業紹介6:サカナのちから)が多々あります。イソロイシンや、アミノ酸サプリメントは医院でも処方できるようになりました。普通においしい料理として召し上がることができればサプリメントは必要ありませんが、加齢により歯の不具合や、消化能力低下などで摂取しにくい、合成しにくいアミノ酸もあり、個々人に合ったサプリメントの摂取はとても合理的な選択です。

サプリメントによらず、摂取するものについては、それが薬剤で必要としても、毒性と副作用についてはしっかり把握しておくのが基本です。効能よりもまず毒性を認識しておきましょう。湿疹やかぶれ、リウマチ、花粉症などによるアレルギー過多反応緩和に使われるステロイド剤やホルモン剤、さらに抗癌剤は、その最たるもので、免疫力を極端に落とす上に長期服用が原則であるために、使用する前によくよくその功罪を考慮し、使うしか無いという状況かどうかの判断が必要です。

免疫力を高めようというのが、人類進化の歴史ですから、むりやり低下させようとする人為的所作は毒に他なりません。特に癌では、免疫力を高めることが治療の根源であるはずなのに、免疫低下剤を処方しなければならないという矛盾は、本来ありえないことと言うべきでしょう。

それでも、何故抗癌剤なのか?他に代用できるものがなかったから、というのが答えです。他のもので同様の効果を得られるものがなかったから、あったとしても、合成して大量生産系にのせることができない、科学的証拠が得られない、等などの原因により、一般化できずに今日に至ったというべきでしょう。

ですから、癌の治療の根本は、まず体内で増殖してしまった癌細胞と関連組織を排除、あるいは量的に激減させる。ある程度以下の量になれば、異常で脆弱な癌細胞は自然死して消えていく運命にあります。その後免疫賦活をはかり、体内強化により新たな癌細胞増殖を防止するのが基本です。

この原則に則れば、まずは良い外科手術、早くて効率的除去術が必要です。早いということは、具体的には時間のみならず、出血量が少ない、身体にかける負担が小さいことを意味します。如何的に短くて済むということは、除去すべき癌組織が周囲の正常組織から孤立し、取り出しやすい状況にあること、出血が少ないということは、癌組織内外の栄養補給血管が少ないこと、あまり組織が大きくないことを意味します。その上に、施術する医師の技量が高いことももちろんですが、発見時の病巣の大きさが重要な意味を持ち、この意味で、予防には失敗しているけれど、できるだけ早期発見が必要であると言えます。次に、発見されてから手術までに癌封じ込めのためにどのような努力ができるか、抗癌剤ですとどうしても体力が堕ちるために手術後の処方になりますが、ここでも免疫賦活による封じ込め作戦の開始点の速さが重要になります。

逆に、単なる癌細胞の集積だったのものが、自前の血管を作って自律的栄養補給できるようになってしまってからでは、外科的除去が格段に難しくなってしまいます。はからずも、この期間がたった4週間であることが示された例があり(大腸癌)、発見からできれば4週間以内の手術が望ましいと言えます。名医に発見から4週間以内の施術をお願いするには少々困難が伴う日本の医療ですが、それこそ治療のための第一歩であり、この点を遠慮している場合ではございません。

さらに、待っている間の4週間は、ただ待っているのではなく、積極的に免疫賦活療法(弊社事業紹介5:カイジ処方)を施し、それにより癌組織の封じ込めのみならず、結果として死滅させることが可能であることを明記します。乳がんにおいて1例、リンパ節転移が検知されていた患者において癌細胞の完全消滅を経験しており、この例においては、実際に切開して組織の縮退と周囲血管の粛清、近隣リンパ節内もふくめ除去組織内の癌細胞消去を確認しました。従って、術後の抗癌剤投与中止の上、免疫賦活療法を漸減しつつ1年間で完治と判断いたしました。この例は、非常に強い癌家系であり、癌化に関わる遺伝子異常が強く示唆されており、かつ、弊社実施の胃癌リスク検査(弊社事業紹介2(2))の結果、ピロリ菌感染も強陽性でありましたのに、患者がピロリ菌除去を長く忌避してきた結果、乳癌をまず発症したものであります。今後も大腸癌、膵臓がんなどの発症可能性を否定できないため、医師たちのボランティア的免疫賦活療法を継続してもらっていますが、その間に、母親の大腸癌(再発)発症となり、どのように良い医療を展開しても、万全を尽くしても、患者本人の自覚と自身に必要な医療の自覚なくしては、医療はお手伝いできないと嘆く次第です。

癌の発症は、45〜65歳、特に55〜65歳が多く、それ以前の発症は先天性(これは多く小児期発症、白血病が最も多い)、放射線被曝などの事故によるもの(アスベスト性肺癌、肝炎ウイルスによる肝臓癌、白血病など)がほとんどです。65歳以上、さらに後期高齢者層になってきますと、発がんそのものの確率は減ってきますし、発症しても非常に進行が遅く、対処法が間に合います。その発症の多くは、やはり感染症によりもたらされ、特にピロリ菌による胃癌や悪性リンパ腫(これはEBウイルス感染も影響します)は80代になってからも激烈な病態を示すため、加齢による免疫力低下とあいまって、重篤になる例が多いです。

加齢自体は病気ではありません。しかし、食物摂取量の低下、消化吸収能力の低下、睡眠時間の短縮などにより免疫力は若いころよりも低下していることは否めません。歯の不調、誤飲の頻度増加による影響も大きい。これが病気のもとになりますので、適当な運動とサプリメントによる補充など、個々人に合った免疫力維持法を知っておくことも必要です。

2. 癌の家系性発症の意義と内容

癌という病気の解析は、英国煙突掃除人に多発する前立腺癌、腎癌に注目し、癌の原因究明と発症機転の基礎研究が開始されたことに端を発します。同時期か、ちょっと早い時期に、ロシアの炭鉱夫に多発した肺がん研究も開始されました。この2者には研究交流がなかったため、当初情報伝達・交換がなく、患者も同じく低所得者層であったことから、研究進展が遅れました。

癌研究の進展は、多くの研究分野が独立して乱立し、互いの接点が少なかったために、1950年代以降の化学、薬学、疫学に分子生物学の進展まで統合分野として伸びることなく、感染症対策としての抗生物質研究が加速されていき、抗癌剤がその派生物質として出てくるまで、つまりは儲かることが約束されるまでその成果を待たねばなりませんでした。

先天性の癌に家系性があることは、極めて稀有な癌について報告されていましたが、後天性の発癌性について、家系リンクがあることはかなり後年の概念です。先天性の癌については、エレファントマンなどの映画にもなっていますし、白血病にいたっては枚挙にいとまがないほどの文学、映画、その他の媒体で一般化していますが、科学的解明についてまでは解説していませんね。