胃と結腸癌:患者が決める医療

胃癌と結腸癌の併発:56歳 女性

新潟県在住、この患者もピロリ菌感染陽性ながら放置。

既往歴:胞状奇胎(31歳)、膝関節半月板損傷にて整形外科手術

現病歴:

平成26年12月13日 人間ドックの便潜血検査で陽性判定、痔疾あり。

平成27年2月5日 近医にて大腸内視鏡施行、盲腸付近にポリープ3個(うち1個は摘除の上、病理解析へ)、 表面不整発赤状態の癌病変を指摘される。中央部クレーター状、出血無し。

平成27年 2月18日 上部消化管内視鏡にて腺癌と指摘されるも放置静観を指示される。

家族歴:父 糖尿病、母 心臓背部に腫瘤塊指摘(86歳ということで放置)

特記すべき事項:半年前に仕事を変えてから激務となり、体重減少が著しく(3ヶ月で10キロ減)、最近では右上腹部の腸管膨満あり、時に疼痛を伴い、1度だけ黒色便の排出を見る。食欲良好、睡眠障害なし。

本人の希望により内視鏡下あるいは腹腔鏡下手術を希望、できるだけ抗癌剤治療は避けたい(副作用への危惧感)との明瞭な意思があり、近医にて術式不可能であったため、当社医療相談にて医院紹介。3月30日に腹腔鏡下手術にて上行結腸癌除去、引き続き6月10日内視鏡下にて胃癌除去(2ヶ所)。摘除術は出血最小限、所要時間も大腸癌1時間20分、胃癌1部分につき1時間と身体侵襲が最小限で済み、回復順調。ピロリ菌除菌は、胃粘膜回復後ということで、8月中旬を予定。

強い抗癌剤忌避の意向に基づき、2月26日よりカイジ20g/日、冬虫夏草3g/日を服用。右上腹部の腸管膨満感、疼痛などの症状消失、便通の正常化、利尿を認める。6月胃癌除去後1ヶ月で5kg以上の体重増加を認め、血液検査、理学所見にて異常なし、発症前の日常生活に戻った。カイジ・冬虫夏草は漸減しつつ、計2年間の服用を予定している。

総括:この例は、胃癌と大腸癌併発という、がんセンター統計において胃癌患者の0.1 %にしか起こらない事例である。異なる医院で、胃癌放置か即刻対処かと意見が分かれたところも興味深い。胃癌・大腸癌除去とピロリ菌除菌という3つの医療対処のうち、緊急性の高いものから順に施行、とはいえ間隔が空くことは如何ともしがたい。内視鏡下胃癌除去後の胃粘膜回復が速やかであることは、その後の体重増加を見ても明らかである。ピロリ菌除菌は、粘膜回復率98%といわれる術後2ヶ月目を基本として予定した。

癌発症にて激変した日常生活への復帰と、治療のタイムスケジュールを同調させていき、QOL(生活の質)を最上に保つことが肝要である。この症例は、また、家族や周囲の理解と協力が最大限にあること、患者が要望を明確に表現できることが、理想的な治療に結実する良い例である。